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​在宅看取りの記録

Ⅲ 大変だった方

 ・・・・・・という章のタイトルもおかしな気がしますが、お許し下さい。
 今までの2章の、老衰の方、癌の方、という分類は、一応は、患者さん側の病名として分けたものではあり、「老衰」「癌」ということについての問題点も私なりには意見のあるものでした。この章の「大変だった方」というのは、単に、こちら側、医療者側の視点からみて、非常に重かった方、というだけの分け方です。関わった期間の長い短いも様々ですし、患者さんの年齢も様々、病気も様々で、それこそ癌だった方もおられますが、あえて「癌」の章に入れずにこちらに入れています。
 在宅で行う医療処置として大変だった、という方もおられますし、色々な病院との連携が大変だった、という方、御家族に状況を理解して頂くことが大変だった方、ただ単に、こちらが精神的に大変だった方、大変の意味も様々です。
 振り返って本音を言ってしまうと、在宅という状況で診療を続けていくことが本当に負担だった方々なわけで、入院してくれればどんなに(我々は)助かっただろう、と思い出します。しかし、それは単に自分の目の届かない所に行ってもらうことになるだけで、要は責任を他人になすりつけるだけのことです。いや、そう自戒するだけのことでもなく、やっぱりやっぱりさらに本音を言えば、大変だったけど、御自宅で看取って上げられて良かったな、なのです。
 もっとも、そんな風に思い返すことができるのは時間が経ってから今これを書いているからなのですが。失敗した、と思うこともありましたし、御家族に申し訳ない思いでいっぱいだったこともあります。
 何せ、大変、だったのですから。
 

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